電話がなった。
ビクビクしながら、画面を見た。
なんのことはない、メールだ。
安心しながら、メールを開いた。
送信元は携帯会社。新規サービスの広告メールだ。
うるせーな、と思いつつ、返信する必要もない事に安堵しつつトイレにむかった。
この前外に出たのはいつだったろうと、便器の上で数えた。
三日前かな、いや、今日は何日だ。と携帯を取り出し確認した。
五日前だった。
しかし、そんなことなど、なんの意味をなさない。
外の世界の事なぞ、無関係なのだ。
無関係であって欲しいのだ。
数日前にもらったメールに返信していないことを思い出した。
なんて嘘をつこう。
頭をかきながら、黄色い水を流してトイレを出た。
メールを無視する時間が長くなるにつれて、たかだか返信するという行為に必要な勇気が大きくなる。
寝てたと言うには流石に寝過ぎだ。
このままいっそ死んでしまおうか。
暗い静かな部屋のベッドの上で、外の世界と独りで戦った。
風邪を引いていた、という無難な嘘が脳裏をよぎる。
心配される事ですら重荷になる。
返信しようと心に決めて、携帯を開く。
白い画面が、暗い部屋で彼女の疲れた顔を照らした。
ここ数日ろくに食べてもいない。
家にはなにもない。
外に出なければならない。
とりあえず、シャワーを浴びよう。
そう思い、携帯を閉じた。
シャワーを浴びている最中に何か思い浮かぶかもしれない。
そう願い、風呂場に向かった。
カミソリで体の毛を剃る。
そのとき、一つの解決法を見つけた。
このまま死んでしまうと言うことだ。
無視してそり続けた。
結局なにも思い浮かばなかった。
フラフラした足取りで頭を拭きながら、願うように冷蔵庫を開けた。
なにも無い。
それが現実だ。
ベッドの上に放置した携帯が光っていた。
ビクビク、そしてワクワクしながら、携帯を開けた。
不在着信1。
別れた男だった。
やる気がなくなった。
ベッドの上に腹ばいになった。
なにやってるんだろう。こんなところで。
ため息がでた。
換気扇の音が部屋に響いていた。
腹が鳴った。
そうだった、食べ物を得るために外に出るんだった。
コンビニまで歩いて7分。
化粧もする必要もない。
ジャージを着て、財布を探した。
別れた男からもらった、ビトンの鞄の中にあるはずだ。
脱ぎ散らかした服の中から鞄を出して財布と鍵を取り出した。
財布の中を見てみると、お守りとしてお母さんからもらった5円しか入ってなかった。
ご縁がありますように・・・・か。
そう独り言をつぶやいた。
泣きそうになった。
事実、涙が一筋だけこぼれていった。
まいったなぁ。
金が無ければ腹はふくれない。
どうすることもできない。
ため息が出た。
メールを返信しようと思った。
しかし、金が無いから貸してくれ、と言うのか。
ご飯食べよう。か?
どうしよう。
彼女はまた頭をかいた。
そうこしてたら、電話が鳴った。
友達からだ。
急いで出た。
大丈夫?連絡つかないから心配したよ-。
明るい声が彼女を泣かした。
デニーズに20分後落ち合うという約束をして、彼女は家を出た。
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