2016年2月12日金曜日

愛あらずにあらず、愛なきなり

電話がなった。
ビクビクしながら、画面を見た。
なんのことはない、メールだ。
安心しながら、メールを開いた。
送信元は携帯会社。新規サービスの広告メールだ。
うるせーな、と思いつつ、返信する必要もない事に安堵しつつトイレにむかった。

この前外に出たのはいつだったろうと、便器の上で数えた。
三日前かな、いや、今日は何日だ。と携帯を取り出し確認した。
五日前だった。
しかし、そんなことなど、なんの意味をなさない。
外の世界の事なぞ、無関係なのだ。
無関係であって欲しいのだ。

数日前にもらったメールに返信していないことを思い出した。
なんて嘘をつこう。
頭をかきながら、黄色い水を流してトイレを出た。

メールを無視する時間が長くなるにつれて、たかだか返信するという行為に必要な勇気が大きくなる。
寝てたと言うには流石に寝過ぎだ。
このままいっそ死んでしまおうか。
暗い静かな部屋のベッドの上で、外の世界と独りで戦った。
風邪を引いていた、という無難な嘘が脳裏をよぎる。
心配される事ですら重荷になる。

返信しようと心に決めて、携帯を開く。
白い画面が、暗い部屋で彼女の疲れた顔を照らした。
ここ数日ろくに食べてもいない。
家にはなにもない。
外に出なければならない。

とりあえず、シャワーを浴びよう。
そう思い、携帯を閉じた。
シャワーを浴びている最中に何か思い浮かぶかもしれない。
そう願い、風呂場に向かった。

カミソリで体の毛を剃る。
そのとき、一つの解決法を見つけた。
このまま死んでしまうと言うことだ。
無視してそり続けた。

結局なにも思い浮かばなかった。
フラフラした足取りで頭を拭きながら、願うように冷蔵庫を開けた。
なにも無い。
それが現実だ。

ベッドの上に放置した携帯が光っていた。
ビクビク、そしてワクワクしながら、携帯を開けた。
不在着信1。
別れた男だった。
やる気がなくなった。

ベッドの上に腹ばいになった。
なにやってるんだろう。こんなところで。
ため息がでた。
換気扇の音が部屋に響いていた。

腹が鳴った。
そうだった、食べ物を得るために外に出るんだった。
コンビニまで歩いて7分。
化粧もする必要もない。

ジャージを着て、財布を探した。
別れた男からもらった、ビトンの鞄の中にあるはずだ。
脱ぎ散らかした服の中から鞄を出して財布と鍵を取り出した。
財布の中を見てみると、お守りとしてお母さんからもらった5円しか入ってなかった。

ご縁がありますように・・・・か。
そう独り言をつぶやいた。
泣きそうになった。
事実、涙が一筋だけこぼれていった。

まいったなぁ。
金が無ければ腹はふくれない。
どうすることもできない。
ため息が出た。

メールを返信しようと思った。
しかし、金が無いから貸してくれ、と言うのか。
ご飯食べよう。か?
どうしよう。
彼女はまた頭をかいた。

そうこしてたら、電話が鳴った。
友達からだ。
急いで出た。
大丈夫?連絡つかないから心配したよ-。
明るい声が彼女を泣かした。

デニーズに20分後落ち合うという約束をして、彼女は家を出た。

0 件のコメント:

コメントを投稿